【故障診断事例】Porsche 911 ターボ(997) P2279 加速不良(ブースト圧不足/インテーク漏れ)

【はじめに】
本記事では、ポルシェ 911 (997)で発生したDTC P2279の診断事例を通じて、加速不良(過給圧不良)を測定値からどのように判断したかを実際の診断手順に沿って解説する。


【この記事で分かること】
・過給圧の目標と実測に差異がある時の確認ポイント
・P2279でも負圧リークとは限らない理由
・997ターボのインテークパイプ類脱着後にチェックすべきポイント、ありがちな不具合


【診断対象車両】
メーカー:ポルシェ (Porsche)
車種:911 (997) turbo
年式:2007年1月
車両型式:ABA-99770
エンジン型式:70 (M97/70)
走行距離:74,000km


【症状概要】
お客様の訴え:車検後加速が悪い気がする、時々エンジンチェックランプが点灯する。
現車確認内容:初期試乗点検では全域で著しい不具合は体感できない。


【入力故障コード(DTC)】
入力コード:P2279 インテークシステム内の漏れ (下限値未満)


【点検・測定結果】
①初期確認
最初の試乗点検では不調は感じなかったが、次に初期診断として診断機を接続した状態で試乗してみる。
故障コードの内容から、空燃比異常なのか、過給圧異常なのかを切り分ける。

〈注意〉
一人で測定値を見ながらの運転は危険なため、可能であれば二人で試乗する。
人手がなく困難な場合は、診断機画面を携帯の動画撮影により記録するか、診断機そのものに録画機能がある場合は活用する。

故障コードの内容からA/Fに狂いがないか確認するための以下の測定値をモニタリングしながら試乗する。
・触媒上流O2センサーラムダ値の目標値、実測値
・ラムダ学習値のアイドリング域、部分負荷域
またターボチャージャー搭載車のため
・過給圧の目標値、実測値

試乗点検の結果
アイドリング、緩加速、部分負荷時のA/F(空燃比)は良好。
(全負荷時は加速増量補正のためF/B制御はない。A/Fの診断については別記事で掘り下げて紹介する。)
全負荷時は、不調を感じるほどでは無いが過給圧実測値と目標値に差異がある。
(診断機のサンプリング速度によっては実測値と目標値の差が確認できないケースもあるため加速力は一定で変化が少ない状態が続くと確認しやすい。)

②絞り込み
故障コードによるとインテークパイプのリークということだが、今回のケースでは2次エア吸いによるA/F不良が見られなかったため、故障コードにある「インテークシステムの漏れ」はインテークシステムが過給圧でないと漏れない、またはスロットルバルブより上流のインテークシステムの漏れということになる。
過給圧でしか漏れない部分は例えばホースバンドの緩みや、ゴムホースのピンホールなどがあり、アイドリングでのインテークマニホールド負圧で2次エアを吸わないような不具合の出方を想像して点検を進める必要がある。

③確証
スロットル下流(インテークマニホールド側)の点検は工数がかかるため、まずはスロットル上流のインテークパイプ等を点検していく。
するとインタークーラー出口とインテークパイプのクイックジョイント部分が半嵌合になって浮いているのを発見。

写真:エンジンルーム側から見たターボパイプのクイックジョイント

写真:タイヤハウス内側から見たターボパイプのクイックジョイント

完全に外れている訳ではないため、過給圧が高まった状態でないとリークしないものと考えられる。
また、ここからエアを吸ったとしてもスロットル上流のためA/Fには影響しない。
この部分はエンジンの修理時に取り外す機会があるため、前回脱着時に組み付け不良があったものと推定される。

写真:車両下側のターボパイプのクイックジョイントも要チェック

半嵌合により浮いたままのOリングが、ブローバイガスのオイルミストにより少しだけ肥大してしまっている。これではクイックジョイントを正しく組み付けても、肥大したOリングでは再度ブースト漏れが発生する可能性があるため交換を推奨。


【原因判明・対策内容】
原因:インタークーラーからスロットルボディ間、インテークパイプジョイント部分の浮きによる過給圧漏れ
整備作業内容:左右インタークーラーの上下パイプ端のOリング交換(計4個)


【作業後の確認結果】
試運転結果:DTC再入力無し。
過給圧の立ち上がりも早くなり最高過給圧力も上昇。測定値の過給圧目標値と実測値の差異なし。
体感の加速感も修理前に比べ強くなった。
・試乗中の最高過給圧 作業前/約0.6bar 作業後/約0.8bar
・試乗中の過給圧のかかり始め 作業前/約3,500rpm~ 作業後/約2,700rpm~
過給圧点検時は、回転を引っ張って低いギアで走行するより、低い回転から高いギアで加速する方がエンジン負荷が高くなり、ターボチャージャーの要求過給圧も高くなるため、最大過給圧を確認しやすい。


【まとめ・技術メモ】
今回はポルシェ911(997)ターボの故障コード”P2279″の診断を例に、過給圧実測値と目標値に差異があるときの診断ポイントや、997ターボ特有で確認すべきポイントを紹介した。
ターボインテークパイプの脱着後は組付けチェックのほかに、試乗点検時しっかりとブースト圧をかけて試乗することも、このような再修理案件を減らし整備品質を上げる重要な項目だ。

<今回の診断ポイント>
・P2279入力時は、空燃比学習値と過給圧目標値、実測値を同時に確認すると診断が早い。
・過給圧の目標と実測に差異がある時は、温度センサーと同様イグニッションON時の外気や大気圧と数値を比較する。
・997のインテークパイプ類脱着後の不具合であれば、インタークーラー配管の嵌合部を確認する。また、お客様がアクセルをあまり踏み込んだりせず、急加速しない乗り方の場合は、インテークパイプ類脱着後かなり時間が経過してから発覚する場合もある。

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