【故障診断事例】Ferrari F355 走行中エンスト (オルタネーター不良)

【はじめに】
本記事では、フェラーリ F355 で発生したオルタネーター不良による走行中エンストの診断事例を通じて、オルタネーター不良を測定値からどのように判断したかを実際の診断手順に沿って解説する。


【この記事で分かること】
・オルタネーター不良時のエンストの様子
・オルタネーターの基本的な発電の点検手法
・チャージウォーニングランプ点灯回路の良否判定
・デンソー製ICレギュレーター付きオルタネーターの各端子の役割(丸型3Pコネクター)

【診断対象車両】
メーカー:フェラーリ (Ferrari)
車種:F355 (XR / 後期 / F-1)
年式:1998年
エンジン型式:F129
走行距離:76,000km


【症状概要】
お客様の訴え:走行中エンストした、徐々にではなくスパッとエンストした後、バッテリーが上がっていて再始動できなかったためレッカー搬送した
現車確認内容:レッカー入庫後、バッテリーを充電し、イグニッションをONにしてもメーター上のチャージウォーニングランプが点灯しない
(本来は警告灯の列の一番右下”SLOW DOWN”の左隣にチャージウォーニングランプが点灯する)


【入力故障コード(DTC)】
今回は診断機の接続は行っていない(OBD世代ではなく、専用診断機が必要)
使用測定器:TOYOTA純正サーキットテスター&電流プローブ (kaise製OEM)


【診断条件・再現確認】
不具合は常時再現性がある
バッテリー充電後は正常にエンジンがかかりアイドリングができる。
アイドリング時やレーシング時のエンジン不調は感じられない。
ご用命内容からオルタネーターの発電不良が疑われる。


【点検・測定結果】
①初期確認
オルタネーターの発電不良が考えられるため、まず簡易的にバッテリー端子間電圧をイグニッションONとエンジン回転中で比較した。
(F355のバッテリーは左フロントタイヤ前方のフェンダー前端下部の中に取り付けられているため端子間電圧を見るにはリフトアップとフェンダーライナーのサービスカバーを取り外す必要があるが、この車両はフロントラゲージ内に充電器用の端子が備えられていたためそれを利用して電圧測定した)
結果はイグニッションONとエンジン回転中の電圧に差がなく11.8Vで発電不良やB端子外れなどの可能性がある。

②絞り込み
F355にはデンソー製のICレギュレーター付きオルタネーターが用いられている。
コネクターは丸型3ピンのタイプで、古いトヨタ車などによく使われた非常にオーソドックスなものだ。
診断手法は国産車と変わらない。
まずオルタネーター自体の発電を点検する。
B端子からのケーブルに電流測定用プローブを取り付けエンジンを始動する。
エンジン回転中ベルトドライブに異常は見られずオルタネータープーリーは正常に回転している。
電流測定結果は0Aで発電してない。
次にサーキットテスターを用いて各端子の電圧を測定する。


コネクター接続状態、イグニッションON状態で

B端子:11.8V OK
S端子:11.8V OK
IG端子:11.8V OK
L端子:11.8V NG

点検の結果、B端子、S端子はバッテリー電圧と等しく正しい。
IG端子にもバッテリー電圧が加わっており、オルタネーターが回転すれば発電する条件が整っていることがわかる。
しかし、L端子電圧が異常であった。
L端子電圧はチャージウォーニングランプが点灯するべき時は0Vである。
チャージウォーニングランプを点灯させるとき、オルタネーター内部のICレギュレーターにあるトランジスタによってL端子はアースに繋がり下記回路が成立する。
“電源→チャージウォーニングランプ→L端子→ICレギュレーター内のトランジスタONにて通過→アース”
イグニッションONのときはチャージウォーニングランプは点灯するべきなので、L端子電圧は0V(アース電位)となっているはずである。よってこの測定結果は異常と判断した。

③確証
試しにオルタネーターのコネクターを取り外し、L端子をボディアースとショートさせるとメーター内のチャージウォーニングランプが点灯した。
よってL端子までのチャージウォーニングランプを点灯させる回路は正常であるといえる。
チャージウォーニングランプが点灯しない原因はオルタネーター内部のICレギュレーターにある。
また、IG端子にバッテリー電圧が与えられているにもかかわらず回転しても発電しない。
これらのことからオルタネーター内部不良と判断できる。


【原因判明・対策内容】
原因:オルタネーター内部不良
整備作業内容:オルタネーターを車両から取り外し、今回オーバーホールは外注作業に任せた。


【作業後の確認結果】
オーバーホールされたオルターネーターを車両に取り付け作動点検を実施。
無負荷電流(電気負荷最小時):29.37A OK
 負荷電流(電気負荷最大時):100.3A OK
イグニッションONでチャージウォーニングランプが点灯
エンジンを始動しアイドリング状態でチャージウォーニングランプが消灯し、バッテリー端子間電圧が11.8Vから14.39Vへと上昇した
上記より発生電流、調整電流、チャージウォーニングランプ制御それぞれの作動が良好と判断。
試乗点検を実施しエンストしないことを確認。
不具合改善。


【まとめ・技術メモ】
今回はフェラーリ F355の発電不良の診断を例に挙げ、各端子の電圧などの判断基準を紹介した。
充電制御が複雑化した近年のオルタネーターは異なるが、この時代のオルタネーターはおおよそどのメーカーも内容は同じのため診断の参考にしていただければと思う。

<今回の診断ポイント>
・基本に忠実に、まずイグニッションONでチャージウォーニングランプが点灯するかを必ず確認する
・発電不良を確認したからといって、直ちにオルタネーター不良と断定せず、IG端子にバッテリー電圧が与えられているか、B端子は確実にバッテリープラス端子に接続されているかなど、各部を確認のうえオルタネーター不良と判断する

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