【故障診断事例】Porsche Panamera (971) 電動パーキングブレーキエラー C124654/C1246F3

【はじめに】
本記事ではPorsche Panamera (971)で発生したDTC C124654 / C1246F3 の診断事例を通じて、電動パーキングブレーキの調整方法やアダプテーションの手順を解説する。


【この記事で分かること】
・DTC C124654 / C1246F3 が入力した際の対処方法
・ポルシェ車の電動パーキングブレーキの調整方法
・ポルシェ車の電動パーキングブレーキの基本調整(キャリブレーション)の実施方法


【診断対象車両】
メーカー:ポルシェ (Porsche)
車種:パナメーラ 971 (Panamera)
年式:2017年
車両型式:ABA-G2H29A
エンジン型式:CSZ
走行距離:77,000km


【症状概要】
お客様の訴え:メーターに”電動パーキングブレーキエラー”と表示され、電動パーキングブレーキスイッチのLEDが赤く点滅する。
現車確認内容:常時再現性あり


【入力故障コード(DTC)】
使用診断機:AUTEL Maxis Ultra
<PSM>
現在:C124654_電動パーキングブレーキ、基本設定なし
現在:C1246F3_電気機械式パーキングブレーキ、改修なし
過去:C12E2F6_右パーキングブレーキモーター、クリアランス不足
(左の場合は”C10BCF9_左パーキングブレーキモーター、クリアランス不足”が入力する)
ここでいう”基本設定”とは、電動パーキングブレーキの基本調整(キャリブレーション)のことである。


【診断条件・再現確認】
この故障コードは、電動パーキングブレーキ用ディスクインドラムブレーキのシュークリアランスが過少のときや、クリアランス不良のままの操作により基本調整が狂ってしまった場合などに検出される故障コードである。
また、電動パーキングブレーキの基本調整(キャリブレーション)を途中で中断した場合や、正常に完了しなかった場合も、同様の故障コードが現在故障(アクティブ)として入力され、消去できなくなる。
診断機を用いて詳細にパーキングブレーキの調整不良を判断する方法は後ほど紹介していく。
まず入庫時に確認する感覚として、正常なシュークリアランスの車両は、スイッチ操作からモーター作動音が連続的に「ウィーン」と1秒~1.5秒程度なり作動完了する。
それよりも作動音が短ければクリアランス過少、それよりも長ければクリアランス過大だ。
基本調整が狂ってしまったものについては極端に作動音が長く3秒ほど続いたり、「ウィーン、ウィン…ウィン…」など行ったり来たりしているような断続的な作動音であったりする場合もある。


【点検・測定結果】
①初期確認
先述の通りまずは電動パーキングブレーキを操作し、作動音を確認する。
今回の車両は左は正常な作動音の長さであったが、右は非常に作動音が長く3秒程度続いた。

②診断機によるクリアランス点検、調整、基本調整(校正)
故障コードと作動音の確認から、右のパーキングブレーキのシュークリアランスが不良と考えられる。次に診断機を用いて数値を確認する。
診断機のECUリストから”PSM”を選択し、”特別機能”から”パーキングブレーキの試運転”に進む。
以降のメニューは実行順序が決まっており、途中を飛ばしたり順番を変更すると基本調整は失敗する。

(1)
まずは”運用開始”を選択。
“成功しました”と表示されたら次に”パーキングブレーキを調整する”に進む。
するとパーキングブレーキが自動的に操作された後、診断機の画面上に測定されたシュークリアランスが表示される。
この車両は画像の通り、右側のシュークリアランスが異常な数値を表示している。
PSMは電動パーキングブレーキモーターの作動電流が急増した位置を機械的ストッパー到達位置として認識し、その位置を基準に現在のクリアランスを算出している。
従って調整により数値が大きく変動する場合がある。
そのことを頭に置きつつ調整を実施する。

(2)
ローターの穴からシュークリアランスのアジャスターが見えるので、調整する。
どちらに回すとクリアランスが大きくなる、または小さくなるかは左右で逆になっている。
アジャスターを回し、”キャンセル”を押すと再度シュークリアランスの測定が始まる。
それを繰り返し、最終的にクリアランスを基準値内に持ってきたら”続く”を押し次のステップに進む。

(3)
次に”パーキングブレーキの研磨”へ進む。
“リアブレーキディスクまたはパーキングブレーキシューを交換されましたか”と聞かれるので”いいえ(キャンセル)”を選択する。本当に交換している場合でも”いいえ(キャンセル)”を選択する。
(AUTELでは「はい」を選択すると走行を伴う研磨手順が開始され、日本の一般道路では条件を満たしにくく完了できないケースがある。そのため通常の基本調整では「いいえ」を選択して進めた。これはAUTELで確認した手順であり、診断機やソフトウェアバージョンにより表示や動作が異なる場合がある。)
このメニューは”いいえ”を選択すると終了するが、飛ばしてはいけない。
この工程を飛ばして先に進むと基本調整は失敗し完了できない。

(4)
次に”パーキングブレーキの調整”に進む。
前提条件を確認し、次に進むと自動的にキャリブレーションが実行される。
完了したら”続く”を押しメニューを完了する。
故障コードを消去し作動確認を実施する。


【原因判明・対策内容】
原因:パーキングブレーキのシュークリアランス不良、または基本調整(キャリブレーション)不良
対策内容:シュークリアランス調整、基本調整の実施


【作業後の確認結果】
電動パーキングブレーキの作動に異常がないことを確認。
また、操作後の作動音が左右の差がなく1秒~1.5秒程度になっていることを確認。
メーター上に故障表示はなく、故障コードの入力もなし。
よって不具合は改善したと判断。


【まとめ・技術メモ】
今回はポルシェパナメーラ(971)の電動パーキングブレーキエラーの事例をもとにポルシェ車の電動パーキングブレーキの調整と基本調整の手順について紹介した。
この記事執筆時点では、95B型マカンを除くポルシェの電動パーキングブレーキ搭載車でおおむね同様の手順であった。
近年の車両では電動パーキングブレーキモーターが片方しか装着されていない車両もある。

<今回の診断ポイント>
・パーキングブレーキの機械的調整と、電気的基本調整は診断機の手順に従い順番に行う必要がある。
・”パーキングブレーキの研磨”メニューは必ず”いいえ”を選択する。
・故障コードを検出していなくてもシュークリアランス不良に気が付けるよう、普段から正常車両の作動音や作動時間を把握しておく。
・調整後は必ず作動音、作動時間、故障コードを確認し、正常にキャリブレーションが完了していることを確認する。

参考にこれは別の車両のパーキングブレーキを分解している様子である
写真下側にアジャスターボルトがあり、上側に見えるホイールシリンダーのような部分が
電動パーキングブレーキモーターの先端部分にあたる

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