【故障診断事例】Porsche Panamera (971) P26F400 電動ヒーターポンプ断線

【はじめに】
本記事では、ポルシェ パナメーラで発生したDTC P26F400の診断事例を通じて、補助クーラントポンプ不良を測定値からどのように判断したかを実際の診断手順に沿って解説する。


【この記事で分かること】
・補助クーラントポンプの役割と作動
・断線系故障コードの点検の進め方
・コネクター内の腐食確認の重要性


【診断対象車両】
メーカー:ポルシェ (Porsche)
車種:パナメーラ 4 (Panamera 4 / 971)
年式:2017年9月
車両型式:ABA-G2J29A
エンジン型式:CSZ
走行距離:44,000km


【症状概要】
お客様の訴え:メーターに故障表示が表示される
現車確認内容:不具合確認OK、常時再現性がある


【入力故障コード(DTC)】
現在:P26F400 ヒーター付きバックアップポンプ 断線


【補助クーラントポンプについて】
971型パナメーラは二つの電動補助クーラントポンプを持つ。
1つはエンジン停止後にターボチャージャーの冷却のために用いられるクーラント補助ポンプ。
いわゆるランオンポンプで、イグニッションOFF後に冷却水温などの数値からDME(エンジンECU)がランオン時間を決定し、補助ポンプと電動ファンを作動させる。
そしてもう一つがヒーターコアに冷却水を循環させる電動ヒーターポンプだ。
これによりアイドリングストップなどの際にもヒーターコアに冷却水を送ることができる。
ヒーターコアの入り口手前にはクーラントシャットオフバルブが備えられており、クーラントシャットオフバルブが開いているときに電動ヒーターポンプが作動するようになっている。

この電動ヒーターポンプは他のメーカーやモデルではA/Cコントロールユニットが制御しているものもあるが、今回の971型パナメーラはDMEが電動ヒーターポンプを制御している。
このポンプが停止するとアイドリングストップ中の暖房性能低下だけでなく、故障コードを検出しエンジン警告灯が点灯する。


【点検・測定結果】
①初期確認
故障コードに書かれる文言は大抵の診断機が直訳の日本語のため、今回に限らず妙な表記になっていることも多いが、この故障コードはヒーターコアに冷却水を送るポンプの断線を表す。
971型パナメーラの電動ヒーターポンプとクーラントシャットオフバルブは右フェンダーライナー内後方に取り付けられている。
車両をリフトアップし、右フロントタイヤとフェンダーライナーを取り外す。

電動クーラントポンプが見えたら、診断機を用いてアクティブテストにて作動を確認する。
DMEのアクチュエーターテストメニューから電動ヒーターポンプを選択し作動させる。
作動音がなく電動ウォーターポンプモーターが作動していないことを確認。

②絞り込み
ポンプモーターは3ピンのコネクターで、内訳は

1:31端子(アース)
2:15端子(IG電源)
3:制御PWM端子

となっている。
制御PWMはDMEに直接接続されており、アースはそのままボディアースポイントに接続される。
IG電源はエンジンルーム内ヒューズボックスの”F6″ヒューズから供給される。
構成はこれだけなので単純な回路だ。
ポンプモーターのコネクターを接続状態でコネクター背面から電圧や波形などを測定する。
・31端子⇔ボディアース間導通あり
・15端子⇔ボディアース間12Vあり
・制御PWM端子⇔ボディアース間 アクチュエーターテスト時PWM波形あり

上記よりモーター本体不良…と行きたいところだが、これではまだ故障診断は不完全。
ここまでで確認できたのはあくまでもポンプコネクターまでの部分が正常というところまでである。
コネクター内部には、腐食・ピン折れ・接触不良のほか、対象物によってはエンジンオイルや冷却水がリークしている場合もある。実際にこのようなことは珍しくない。
今回の診断についてもコネクターを取り外すと内部が腐食しており、これにより故障コードの検出、ポンプが作動しない不具合が起きていたことがわかる。

③確証
コネクター内への冷却水リークがあることからポンプ交換は必須なので、新品のポンプとコネクターピン(リペアハーネス)を用意し、修理を進めながら確認していく。
コネクターを修理した状態で新品の補助クーラントポンプを接続し、アクチュエータテストを実施すると正常作動した。


【技術メモ】
コネクターハウジングとコネクターピンはポルシェ純正では提供されないため、VolkswagenまたはAudiの部品を取り扱うところでコネクターハウジングの品番でダイレクトに注文するとよい。
コネクターハウジングの品番から対応するピンも問い合わせることができる。
ピンは配線付きでリペアハーネスとして提供される


【原因判明・対策内容】
原因:電動ヒーターポンプ本体不良、コネクター内への冷却水リークによるコネクターピンの腐食
整備作業内容:電動ヒーターポンプ本体の交換。配線修理はコネクター直後で切断するのではなく、もう少し上の部分まで配線内部の芯線に腐食がないかを確認の上、リペアハーネスを半田付けまたはスプライスや圧着端子などで接続する。
接続後アクチュエーターテストにて電動ヒーターポンプの作動を確認。


【作業後の確認結果】
再現確認:修理作業後作動良好。故障コードの検出なし。
※今回のように冷却水やエンジンオイルなどがコネクター内にリークしてくる場合、毛細管現象によってワイヤーハーネス内部を液体が上がっていき、ECUコネクター内に到達している場合がある。
そのため念のためECUコネクター内も点検し腐食などがないことを確認しておく。
この点検を怠ると、ECUコネクター内の異常に気付かずに再修理に繋がる可能性がある。


【まとめ・技術メモ】
今回は971型パナメーラのヒーター用電動クーラントポンプの診断を通じて、コネクター内部に液体がリークしている不具合を紹介した。
診断に慣れてくるとコネクター接続状態の電圧や波形を取った時点で本体不良と判断してしまう失敗も発生しがちになる。また、接続状態での計測前にコネクターを脱着してしまうと、接触不良などの不具合が再現しなくなる恐れもある。
コネクター接続状態での点検ののち、コネクターを切り離して点検するのが基本だ。
電源・アース・PWMが正常でも、最後はコネクター内部を目視確認することで初めて故障診断は完結する。

<今回の診断ポイント>
・断線、短絡などの故障コード検出時は対象物のコネクター内部まで点検を怠らない。
・コネクター内部に液体がリークしている場合、毛細管現象によりワイヤーハーネス内部を液体が上がってきている可能性があるためECU側のコネクター内部も点検すること。

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