【診断対象車両】
メーカー:ポルシェ (Porsche)
車種:911 GT3 (991.1)
年式:2014年
エンジン型式:MA175
走行距離:13,000km
【症状概要】
お客様の訴え:メーターにクーラント警告故障表示、水温計が表示しない
現車確認内容:メーターに黄色でクーラント故障警告あり
【診断条件・再現確認】
冷間→暖気にてメーター故障表示する
特に不具合は感じずオーバーヒートしている様子はない
【入力故障コード(DTC)】
<DME>
P3081 エンジン温度が低すぎる
<インストルメントクラスター>
00A050 警告:水温センサの故障
【点検・測定結果】
インストメントクラスターの故障コード”00A050″はDMEの故障コードに連動して入力した故障コードと推定される。
DMEの故障コード”P3081″を主として故障診断を進める。
“P3081″はDMEが持っている冷間時~暖気フェーズにおける冷却水の温度上昇MAPと現在の水温の差異により故障が検出され、MAPから想定される温度よりも低い方向に閾値を超えている場合に入力する。つまりオーバークール側の警告ということになる。
従って実際の水温制御の不良もしくは水温の読み取り系統の不良が考えられる。
一度故障コードを消去し水温センサー信号の妥当性を評価する。
完全冷間時に診断機を使用した測定値計測にて油温や外気温と比較してもよい。

水温センサーの信号が正常であれば次にクーラントレギュレーター(サーモスタッド)を点検する。
点検方法は実際に取り外して作動を確認するか、非接触温度計などを用いて作動を確認する。
(非接触温度計を用いたサーモスタッドの点検方法については別記事にて記す)
今回は実際にサーモスタッドを取り外し、サーモスタッドとハウジング内のシールの様子を点検。
サーモスタッドが開固着していたためサーモスタッド不良と判断。

(ちなみに、サーモスタットハウジング内のシール(赤矢印部)の不良によりサーモスタッドの外側から冷却水がリークしオーバークール警告するパターンもまれにある)

【水温センサー点検の予備知識】
あくまで参考値程度だが
水温センサーの常温(約20℃前後)時の抵抗値は約2.50~2.70kΩ程度
エンジンの水温センサーコネクターをオープンさせると
P0118 クーラント温度センサー 信号超過
P0119 水温センダー 接触不良
の故障コードが入力し、測定値は
T020_エンジン温度(測定値) -48.000℃
に固着する

【クーラントレギュレーター(サーモスタッド)点検の予備知識】
開弁温度は記入されておらず正規の修理書でも明記されていない。
今回の作業中は実測実験できなかったが、実測したことのある車種で、
997型911の開弁温度は約90℃前後(今回と同じような古典的なサーモスタッド)
971型パナメーラの開弁温度は約105℃前後(MAP制御型サーモスタッド)
程度であった

【原因判明・対策内容】
原因:サーモスタッド開固着
交換部品や整備作業内容:サーモスタッド交換
【作業後の確認結果】
冷却水を注入後エア抜きの実施。
一度冷まし冷却水補充の後冷間→完全暖機して故障コードが入力しないことと、水温計の表示が正しいことを確認し作業完了。
【まとめ・技術メモ】
今回はクーラントレギュレーター(サーモスタッド)の固着について記した。
Volkswagen系の車両はエンジンECU内に水温上昇MAPを持っており、MAPから逸脱すると故障コードを検出するものが多い。またそれらは主に暖機途中に故障検出する。
今回は簡単に脱着できる位置にサーモスタッドを備えていたため直接点検を実施したが、車種によっては脱着に非常に時間を要するものや、サーモスタッドを複数持つもの、シャットオフバルブなどのサーモスタッド以外の水路開閉制御を持つものなど様々な条件がある。
その場合症状や不具合発生時期をもとに絞り込みを先に行っていく。
オーバーヒート側なのか→暖気するまでは正常なのか
オーバークール側なのか→暖気後は正常なのか
水温検出側なのか→水温センサー測定値は妥当か
実際の水温制御側なのか→サーモスタッドやその他水路を開閉する制御機構の物理的状態、作動の点検
これらの情報を根拠に不要な点検を省き、最後の一手で実際に分解し物理的点検に進むのがスマートで合理的な診断だ。


コメント