【診断事例と失敗談】Mercedes-Benz G550 (W463) A/T滑り P0894他

【診断対象車両】
メーカー:メルセデスベンツ (Mercedes-Benz)
車種:G550 (W463前期)
年式:2009年
型式:ABA-463236
エンジン型式:273 (5.5L V型8気筒DOHC自然吸気エンジン M273)
走行距離:95,000km


【症状概要】
お客様の訴え:エンジン回転数だけが上がって走行できない
現車確認内容:レッカー入庫。前進後退ともに走行レンジが滑っているような感じでエンジン回転数だけが上昇し駆動力がない。


【入力故障コード(DTC)】
使用診断機:AUTEL MaxiSys Ultra
入力コード
・P0894 トランスミッション滑り
・P0731 1速ギア妥当でない
・P0732 2速ギア妥当でない
・P0606 ECU内部エラー
(コードに対しての文言は診断機により異なる)


【前書き】
この診断事例は失敗談に近い。
メルセデスベンツで故障コード「P0606 ECU内部エラー」と見た瞬間にA/TのECU不良が頭をよぎった。
何か決定づけるものはとアイドリング状態で測定値をあれこれ確認して、試しに診断機を使いA/Tの基本調整をしてみようと考えた。
ふと走行レンジにシフトすると駆動力を感じたため、試しに走行させると走行できる程度の駆動力が発生していた。(高負荷では滑るがアクセル開度が低いと正常に走行できる)
何も作業しておらず、変わったのはアイドリングによってエンジンが暖気したことくらいしか…
と思った時やっとピンときて、車両をリフトアップしアンダーパネルを外すとATFが漏れていることを確認した。


【点検・測定結果】
ATFを抜き取り量を確認。
測らずとも判断できるくらい抜き取り量は少なく、これが滑りの原因と判断できた。
暖気状態になって症状が変化したのはATF油温が上昇し量が増えたことによるものと推定。
抜き取ったATFに異常な金属粉やクラッチなどが見られないことを確認のうえ、ATFを規定量充填ししっかりと駆動力がかかることを確認。


【原因判明・対策内容】
原因:ATFの漏れによる量の不足
整備内容:ATFクーラーホースよりATFが漏れていたため漏れ箇所を交換、修理、清掃後ATFを規定量充填。各学習値をリセットし再学習の実施。
走行テストを行い、高負荷加速から低速運転まで問題なく走行できることを確認。
走行テスト後の故障コード入力がないことを確認し修理完了。


【まとめ・反省点】
今回の反省点は「先入観」に他ならない。
「P0606 ECU内部エラー」に完全に意識を集中してしまいそれに沿った診断を進めようとしたが、それには何の根拠もない。
むしろECU不良で変速できない、シフトできないならまだしも滑るという症状は考えにくい。
一応チラっと下回りは見たものの、この車両は最近中古車で購入した車で下回りは清掃されており大量のATFが漏れた後だとは一目では判断できなかった。
特に中古車で出回っている車は本来の修理をせず故障コードの削除だけ行っていたり、古い車両ではメーター内のチェックランプの電球だけ抜かれていたり、今回のようにオイル漏れを清掃だけしていたり様々な背景があるため基本点検は怠ってはいけない。
全て疑い、すべて確実に確認していくことが大切だ。
今回のケースでは不具合に再現性があり、整合性のある故障コードの入力もある。
まずはその内容に沿って故障診断を進めるべきであるし、その診断の前提として基本点検を行う上でATF量の点検や、ATFの汚れ具合の点検などをまず行う必要がある。
結果的に答えには辿り着いたが、基本的な診断プロセスを怠ったことで遠回りしてしまった。
あくまで冷静に、先入観を持たずに基本に忠実に診断を進めなくてはいけない。
それを再確認した事例だったため今回紹介した。

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