【故障診断事例】Porsche Panamera 971 水温センサー不良による故障コード P0171 / P0174 A/Fリーン過ぎる

【診断対象車両】
メーカー:ポルシェ (Porsche)
車種:パナメーラ ターボ 971型 (Panamera turbo)
年式:2020年
車両型式:ABA-G2H40A
エンジン型式:CVD (4.0LV8ツインターボ)
走行距離:59,000km


【症状概要】
お客様の訴え:時々エンジン警告灯が点灯する、時々オーバーヒート警告表示する
現車確認内容:入庫時エンジン警告灯は点灯しているがエンジン不調は感じず


【入力故障コード(DTC)】
・P0174 混合気生成 バンク2 リーン過ぎる
・P0171 混合気生成 バンク1 リーン過ぎる
・P017B シリンダーヘッド部のクーラント温度センサー 信号エラー
故障コードは全てパッシブ(過去)で入力している。


【診断条件・再現確認】
診断開始時はエンジンが暖気状態でエンジン不調はなし
故障コードはすべて過去になっており現在故障コード消去しても再入力はなし
排気ガス臭気良好
排気ガス実測数値 CO:0.00% / HC1ppm 問題なし
測定値上のA/F現在補正値、学習値ともにリーンすぎる様子はない
インストルメントクラスター上の水温90℃ 正常
診断機上の測定値での水温98℃ 正常
現在故障コードが入力しているA/Fと冷却水温に異常はないため、入力している過去の故障コードのFFD(フリーズフレームデータ)を確認する。


【記録された過去故障コードのFFD】
・P0174 混合気生成 バンク2 リーン過ぎる
 冷却水温93℃
 エンジンオイル油温18℃
 吸気温度16℃
 故障コード入力日は他の故障コード入力日と別日

・P0171 混合気生成 バンク1 リーン過ぎる
 冷却水温92℃
 エンジンオイル油温23℃
 吸気温度20℃
 故障コード入力日はP017Bと同日ほぼ同時刻

・P017B シリンダーヘッド部のクーラント温度センサー 信号エラー
 冷却水温98℃
 エンジンオイル油温59℃
 吸気温度20℃
 エンジンスタート時のクーラントテンパレチャ85.8℃
 故障コード入力日はP0171と同日ほぼ同時刻

全てに共通しているのはエンジンオイル油温が低い(吸気温度と近い)状態で冷却水温が高いこと。
混合気生成がリーン過ぎるのはバンク1,2ともにであること。
そしてP017BのFFDよりエンジン始動時の冷却水温が85℃であること。
これは実際に暖気後一度エンジンを停止し再始動すれば正常な数値でも起こりえることだが、入力故障コードと整合性があるため確認する必要があると判断できる。


【点検・測定結果】
初期診断から一夜明けたあと、エンジンが完全に冷えた状態で点検。
エンジンは始動せずIG ONの状態でインストルメントクラスター上の冷却水温は90℃になっている。

もちろん冷却水は常温の状態ではあるが、一応実測したところ22℃。
測定値点検、ラジエター出口温度23℃で実測温度と差異無し。シリンダーヘッド水温は101℃で実測温度と差異あり。
シリンダーヘッド水温センサー回路点検。

電源側端子⇔アース側端子間電圧5.0V 良好
電源側端子⇔ボディアース間電圧5.0V 良好
アース側端子⇔ボディアース間抵抗1.0Ω以下 良好
センサー回路側点検結果OK
センサー側コネクター内部腐食発生あり

一度コネクターを復元しエンジン始動すると、完爆したがエンジンの回転はボソボソと不安定な状態でランダムミスファイアあり。しばらくアイドリングし水温が少し上昇すると不調はなくなり正常になったが、さらにエンジン冷却水温が温まってくると今度はまだ暖気途中であるが測定値上の冷却水温が120℃を超え、インストルメントクラスター上に「エンジン温度超過 エンジン冷却のため停車してください」と表示が出た。
この時エンジン出口側のクーラントホースを手で触っても明らかに120℃はなく少し暖かい程度で測定値と差異があると判断できた。
よってシリンダーヘッド部の水温センサー特性ずれ不良と判断。


【原因判明・対策内容】
交換部品や整備作業内容:シリンダーヘッド水温センサーは左バンクのシリンダーヘッドに取り付けられており、レベルゲージガイドの横あたりにある。
ターボパイピングの影になっており上から見ると少し発見しにくい位置だが交換は容易である。
新品の水温センサーの常温時測定した抵抗値は1.9kΩ程度
不具合品の水温センサーは同条件で測定すると0.14kΩで特性がずれていることがわかる。


【作業後の確認結果】
再現確認:交換後実水温と測定値の差異がなくなり、冷間始動後のエンジン不調もなし
暖気後のヒート警告もなし、DTC再入力なし。


【まとめ】
今回は故障コードのFFD解析、それをもとにした不具合再現の確認という診断の流れを紹介できた。
入庫時不具合が再現せず故障コードが過去になって再入力しない場合は、このような事例もあることを少し覚えていていただければと思う。


【余談・技術メモ】
このV8ツインターボエンジンの冷却水温度センサーはこの左バンクヘッドに取り付けられた水温センサーとラジエター出口の水温センサーの2つしか装着されていない。
これはカイエンV8や、他ブランドで同系統V8エンジン搭載車のランボルギーニウルス、アウディQ8、ベントレーベンテイガなども同じ構造だ。
(V6エンジンは構造や制御内容が異なるため注意)
測定値上の水温関連の項目は3つあるが、そのうちの1つの「水温」という項目は実測値ではなくECUが演算した計算値が表示されていると推定。

シリンダーヘッドの水温センサーのコネクターをオープンさせると測定値上は
水温:215℃(限界値)
シリンダーヘッドのクーラント温度:33℃(代替値)
となるため「水温」という項目がコネクターオープンにより振り切った→シリンダーヘッド温度センサーはこの項目か!…となってしまいそうだが、ショートさせても同じ測定値の結果となる。
通常NTCタイプの水温センサーの断線ショートは同じ結果ではなく、断線が冷たい側の振り切り値で、ショートが熱い側の振り切り値になることが一般的だ。
ちなみにこの試験時のメーター上の水温は代替え値が表示されており水温計上は正常になる。
そして入力する故障コードは
・P017D シリンダーヘッド部の水温センサー 電源電圧への短絡 (コネクターオープン時)
・P017C シリンダーヘッド部の水温センサー グラウンドへの短絡 (コネクターショート時)
…が入力する。

また、このエンジンのシリンダーヘッドの基本目標水温は106℃で、106℃前後になるようMAP制御型サーモスタッドをPWM制御する。
測定値上110℃まではメーター上の水温は90℃と表示されている。
測定値上110℃を超えるとメーター上の水温も上昇し始め、120℃を超えるとメーター上に赤色で警告メッセージが表示される。

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