【診断対象車両】
メーカー:ポルシエ (Porsche)
車種:911 GT3(991型前期)
年式:2014年
エンジン型式:MA175
走行距離:13,000km
【症状概要】
お客様の訴え:メーターにPADM故障表示
現車確認内容:入庫時常時不具合再現中

【入力故障コード(DTC)】
入力コード:001023 右ドライブトレーンマウントプレッシャーセンサー 信号ラインのグラウンドへの短絡
【診断条件・再現確認】
PADM(ポルシェアクティブドライブトレーンマウント)は大まかに2系統に分けられる。
マウントに封入された流体の硬さを制御するコイル系統と、その流体の硬さを計測する圧力センサー系統である。
PADMの詳細な内容は別記事で触れることにする。
今回は故障コードから圧力センサー系統の故障であることがわかる。
故障コードは消去できず常時不具合が再現中のためこのまま診断に進む。
【点検・測定結果】
まずは診断機を用いて測定値(ライブデータ)を確認する。
PASM/PADM コントロールユニットの測定値を参照する。
正常な車両の信号は
・左右のドライブトレインマウントのプレッシャーは超高速で変動している。
・左右のドライブトレインマウントのプレッシャーセンサー供給電源は安定して4.98Vである。
・左右のドライブトレインマウント電流は超高速で変動している。
測定値の名称は使用する診断機によって異なる可能性があるが内容は上記の通り。
今回の診断では
・右のドライブトレインマウントのプレッシャーが0.000psiで固着。
・右のドライブトレインマウント電流が0.000Aで固着。
故障コードの内容から右ドライブトレーンマウントの圧力が測定できないためコイルの電流制御を停止しているものと推定できる。
右のドライブトレーンマウントプレッシャーセンサー系統に絞り込みできたので次は実際の電圧を測定する。
マウント内の圧力をモニターするセンサーはオーソドックスな3ピンタイプのセンサーで、電源、信号、アースからなる。(バキュームセンサーなどと同様)
マウントの6ピンコネクターの内訳は次の通り。

1:N.A.
2:圧力センサー電源
3:マウントコイル HIGH側
4:圧力センサー信号
5:マウントコイル LOW側
6:圧力センサーグラウンド
一般的な圧力センサー同様の基本的な点検手法で点検する。
バキュームセンサーなどと同様に抵抗測定による良否判定はできない。
コネクターは接続状態でコネクター背面よりピンなどを差し込んで信号電圧を測定すること。
①センサー電源点検
2:圧力センサー電源 ⇔ 6:圧力センサーグラウンド 間 電圧測定 (5Vが正常)
異常であれば、
2:圧力センサー電源 ⇔ ボディアース 間 電圧測定 (5Vが正常)
6:圧力センサーグラウンド ⇔ ボディアース 抵抗測定 (0Ωに近いのが正常)
上記測定により電源線の断線、アース線の断線、アース不良、電源線の短絡などに絞り込んでいく。
②センサー信号点検
4:圧力センサー信号 ⇔ 6:圧力センサーグラウンド 間 電圧測定 (0.65~0.74V程度)
変動する数値のため5Vまたは0VでなければOKと思ってよいと考える。
5V一定であれば電源線と信号線の短絡が疑われる。
0V一定であればグラウンド線と信号線の短絡、信号線のボディアースへの短絡などが疑われる。
上記短絡点検が良好で信号電圧が異常であればセンサー本体不良と考えられる。
もし上記すべての測定が正常で故障コードが入力しているのであればセンサーからコントロールユニット間のワイヤーハーネスが断線していると考えられる。
今回の診断車両は電源グラウンドは正常でセンサー信号電圧が0Vであったためセンサーの不良と判断した。

【原因判明・対策内容】
原因:右PADM内圧力センサー不良
対策内容:右PADM交換
作業内容:GT3のPADM交換はカレラに比べて比較的作業スペースが広い。カレラに関してもリアスポイラーの取り外し後エアクリーナーケースを取り外せばリアバンパーを取り外さずにPADMを診断、交換することは可能だ。エアクリーナーケースを取り外す角度はコツが必要だがそこまで無理をしなくても取り外すことができる。


【まとめ・技術メモ】
今回は991型911GT3の故障診断事例をもとにPADMの診断について紹介した。
大まかにコイル側とセンサー側の不具合に分けられるが私の経験した中では今回紹介した圧力センサー系の故障のほうが多い。
今回は右のPADM信号電圧が不良で故障コードは”001023″であったが、左の不具合の場合は故障コード”001013″が入力する。
981型Cayman/Boxterにも同様のマウントがミッション側に備えられているものもあり、コネクターピン配列や診断手法も同様なので、Cayman/BoxterのPADMを診断する際にも参考にしていただければと思う。


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