【はじめに】
ATFは定期的交換の必要性がある。その理由と交換推奨時期、長期間ATFを交換していない車両の交換リスクについて記す。
【ATF交換の必要性】
「正直真剣に交換が要りますか?」と聞かれることがあるが、結論から言うと交換はもちろん必要である。
A/T本体不具合のほとんどはミッション内部のブレーキやクラッチ、トルクコンバータ内のロックアップクラッチなどの摩耗粉によるものが多い。
作動に従って発生する摩耗粉はATF内を浮遊している。
そして非常に精度の高いバルブボディはATFにより作動している。
これらはエンジン内部よりも繊細で精密な油圧作動を必要とする。

クラッチなどの摩耗粉がバルブボディ内部のソレノイドバルブやチェックボールの作動を邪魔したり、油路を狭めるオリフィスが詰まったりして不具合が発生する。
また、トルクコンバータ内でステーターのワンウェイにクラッチ等の摩耗粉が詰まることで作動不良になり、カップリングレンジのみの作動になってしまいトルク不足が発生したりもする。


【ATFの交換目安は?】
ATFの交換サイクルは約20,000kmごとの交換が推奨される。
新車から数万キロで手放すなどの場合は確かにATFを交換しなくてもほぼ不具合は発生しないが、その後中古車で購入した二次ユーザーは、交換歴がない、または不明であれば乗り出す前に交換し、その後定期的に交換することが望ましい。
【ATF長期未交換車両の交換リスク】
「100,000km以上交換していないATFは交換してはいけない」とよく言われる。
これは絶対とは言えないがリスクは非常に高くあながち間違いではない。
今正常に走れているから大丈夫という安易な判断は禁物だ。理由は以下の通り。
①使用距離大に対してのリスク
ATFの黒い汚れはA/T内のクラッチやブレーキの摩耗粉である。ATFが真っ黒の場合はかなり磨耗が進んでいると考えられる。新品のATFは汚れきったATFよりも摩擦係数が低い。そのため今まで滑っていなかったクラッチやブレーキがATF交換後滑ってしまう恐れがある。
②使用年数大に対してのリスク
新品のATFにはOリングを膨潤させる添加剤が含まれている。定期的にATFが交換されていれば有効な添加剤だが、完全に硬化したOリングでは油圧がリークしてしまうリスクが高い。油圧がリークするとクラッチやブレーキがしっかり締結できず滑る原因になる恐れがある。

【最後に】
交換歴に関わらずATF交換前には汚れ具合や走行フィーリング、各レンジに入れた時のシフトショックなどを確認すること。また、長く交換していないATFを交換する際にはお客様に十分リスクを説明した上、O/Hになる可能性があることを示した上で実施する必要がある。
- 参考
- この記事は2025年7月6日にブリティッシュモータース様で行われた
ヘリテージトレーニングデイ第3回「A/Tミッション」の内容を元に記載しました。



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