【診断対象車両】
メーカー:ランボルギーニ(Lamborghini)
車種:アヴェンタドール S LP740-4 (Aventador S)
年式:2017年10月
エンジン型式:L539
走行距離:12,500km
【症状概要】
お客様の訴え:走行中右フロントより「クォーン」音がする
現車確認内容:外観上損傷箇所なし、ブレーキ残量あり、入庫時の短時間の走行テストでは再現性なし
【診断条件・再現確認】
・20~30分程度走行後
・ブレーキを踏んでいない
・アクセルオフでエンジンブレーキがかかり前のめりにGがかかったとき
・40km/h前後の時
上記条件下で非常に大きな「クォーン」音が一定時間継続的に発生する
ブレーキを踏んだり、ハンドルを切ったりして足回りに変化を与えると、一時的に音は変化したり消えたりする
音の感じはカーボンディスク車両で、洗車直後に動かす際にブレーキを踏むとたまに出る「クォーン」音と非常に似ている
(あの音が出ている時にキャリパーやホイールを触ると、想像以上に激しく振動している)
【入力故障コード(DTC)】
入力コード:なし
【異音、振動のメカニズム】
異音や振動、ショックなどの不具合を総称してNVHと呼ぶ。
(Noise/Vibration/Harshness)
自動車の各部品は走行中常に振動している。
しかしその振動が人間の可聴周波数でないから耳に聞こえないのである。

ブレーキ鳴き(キー音)も同じだが、発生条件下における何らかの部品の固有振動数や、作動による振動の周波数が一致し音の波が合成(共振)したときに振動は大きくなる。
またその振動の周波数が人間の可聴周波数の場合に異音として私たちに聞こえる。
部品の作動による振動や走行による振動は無くすことは出来ないため、重りをつけたり取り付け部にマウンティングゴムを用いたりして、部品の固有振動数を変化させ共振点をずらすことで
振動の周波数を人の可聴周波数から外す。
【点検・測定結果】
今回の共振異音に対しては発生中ブレーキングやハンドリングで音が変化することから、足回りの部品が共振していると言える。
また音質的に音が出ている部位自体は
ブレーキディスクと推定する。
タイヤ、ホイール、ブレーキ、ドライブシャフト、フロントデフなど関係部位の固有振動数を何らかの方法で変化させていく。
車を拝見するとブレーキやタイヤの表面は荒く、ハードなブレーキングやトラクションがしっかりかかる加速をしてきたように見て取れる。
まずは基本的な手法でブレーキパッドの表面研磨を実施。
ピストンやキャリパーとパッド間に減衰力を持たせるシートの貼り付け、ブレーキ鳴きの時と同じ手法でブレーキパッドの固有振動数をずらしてみる。

試乗した結果変化はなし。
次にバッキングプレート。
ブレーキディスクの後ろについているバッキングプレートを取り外して試乗してみる。
これにより変化すればバッキングプレートにウェイトを貼り付けたりして固有振動数をずらす。

試乗した結果こちらも変化はなし。
次にタイヤ。
前進方向に激しくトラクションがかかってきたタイヤは、トレッド面が波状摩耗している。
この波状摩耗は路面に逆立つような格好でトレッドの角が立っているため、ロードノイズや振動が大きくなる。
今回はフロントタイヤを左右入れ替え
回転方向を変えることで固有振動数を
変化させてみる。

試乗した結果、異音が解消した。
【原因判明・対策内容】
ブレーキ、ディファレンシャル等の正常な振動に、この波状摩耗したタイヤの振動がある条件下でちょうど共振したとき、「クォーン」という音が人間に聞こえる…ということになる。
今回直接音を出していたのはブレーキディスクだが、仮にブレーキディスクを交換しても、現在のブレーキディスクと新品のブレーキディスクの固有振動数が変わらなければ、治らなかった可能性は十分にある。
今回はタイヤの入れ替えで変化したためタイヤを違う物に履き替えて修理完了。
【作業後の確認結果】
再現確認:高速道路にてお客様のご指摘の条件にて試乗
試運転結果:異音解消

【まとめ・技術メモ】
先程記載したとおり、車の各部品の作動によるや走行中の振動は、無くすことはできない。
また共振による異音や振動は車速や温度、エンジン回転数、湿度など特定の条件が重なったときのみ発生する場合があるため、診断が難しいケースがある。
追求するのは時間が必要でだが、今回はしっかりと診断できたため、紹介した。


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