【構造解説】フォルクスワーゲン系DCT(DSG)セレクターレバー(シフトバイワイヤー/パーキングロックケーブル有り)の構造と作動

【はじめに】
この記事ではフォルクスワーゲン系DCT(DSG)に用いられるセレクターレバーの信号やパーキングロックについて記す。
世代は2003年~2021年頃のフォルクスワーゲン ゴルフ ポロ や アウディ A1 A3 A4などに用いられた。

シフトバイワイヤー制御だが、パーキングロックケーブルが存在するため、初見ではシフトバイワイヤータイプに見えない。
そのあたりも詳しく解説する。

(DSG…フォルクスワーゲンの名称でダイレクトシフトギヤボックスの略。世間一般でいうDCTのこと)

(DCT…デュアルクラッチトランスミッションの略。2枚のクラッチを交互に使い2つのギヤトレーンを制御するもの。詳細は別記事にて)

(シフトバイワイヤー…シフトレバーとトランスミッションの機械的な連結を廃止し、電子信号とアクチュエーターでシフトポジションを制御するもの)

【シフト制御の構成部品】
主要構成:
セレクターレバー (シフトメカニズム)
パーキングロックケーブル付き
トランスミッション(ギヤボックス)
ドライブトレーンCAN
トランスミッションECU(ギヤボックスECU)
A/Tバルブボディ(DSGメカトロニクス)
ゲートウェイECU(データバスダイアグノーシスインターフェース)
インストルメントクラスター(ダッシュパネルインサート)

【制御の内容】
セレクターレバー(シフトメカニズム)はシフトレバー本体とパーキングロックケーブルで構成されている。
シフトロック用のソレノイドはセレクターレバー本体に内蔵されており、シフトロック解除の条件が揃った時ロックを解除する。
PポジションスイッチはON/OFFの単純なマイクロスイッチが用いられ、セレクターレバーがPレンジ位置にあるかそれ以外かを検出する。

セレクターレバー内にはコントロールユニット(以下CU)が内蔵されており、ドライブトレーンCANに接続されている。運転者が選択したセレクターレバーの位置はホールセンサーによって読み取られ、その情報はドライブトレーンCANを通じてトランスミッションに伝わり、トランスミッション内のアクチュエータ(メカトロニクス)が実際にギヤを切り替える。

これがいわゆるシフトバイワイヤー制御であり、従来のシフトケーブルを用いた機械的制御と異なる点だ。

…ここまでは他社系のシフトバイワイヤータイプと同様だが、このセレクターレバーにはケーブルがミッションに接続されている。

このケーブルがあるためシフトバイワイヤーに見えず、ワイヤーによりギアを切り替えているのかな、シフト位置はトランスミッションにインヒビタースイッチのようなものが着いているのかな、と思いきやそうではない。
このケーブルはパーキングロックをかけるための専用ケーブルでありシフト制御とは全く関係ない。
このケーブルによりパーキングロックを解除できることで、シフトロックがかかっていなければセレクターレバーによってパーキングロックを解除することができ、故障時も車を押して動かすことができる。
(トランスミッション内でギヤが締結している状態でも、自然な状態の時DCTのクラッチは締結していないため、ここの詳細は別記事にて)

このパーキングロックケーブルを備えていないシフトバイワイヤー制御のDCT搭載車両は特殊専用工具などによりパーキングロックを解除しないと故障時押して動かすことが出来ない車両が多数存在する。

なお、インストルメントクラスター(ダッシュパネルインサート)はドライブトレーンCANからのシフト位置情報を元にレンジ位置を表示する。

【点検時の参考】
端子割り当ての一例(Audi TT 8J)
1:ターミナル31(グラウンド)
2:セレクターレバーPポジションロックスイッチ(F319)
3:(NA)
4:(NA)
5:ターミナル58d(イルミネーション)
6:(NA)
7:ドライブトレーンCAN ハイ
8:ドライブトレーンCAN ロー
9:ターミナル15(IG)
10:ターミナル30(₊B)

ドライブトレーンCANの基本ワイヤーカラーは
CANハイ:オレンジ/黒
CANロー:オレンジ/茶
ツイストペア線になっているため分かりやすい。
ターミナル31(アース)の基本カラーは茶
ターミナル30(+B)のカラーはまちまちだがハーネスの太さ等で見当をつける。
実際の配線をサーキットテスターやオシロスコープなどで必要な端子電圧や信号などを確認する。

【よくある不具合例】
典型的な故障モード:セレクターレバーからのシフト位置の情報と、実際のトランスミッションからのシフト位置のフィードバックに相違がある場合、またはいずれかのCAN信号が受け取れない場合は、インストルメントクラスター上のシフト表示が点滅し異常を伝える。
その場合シフト位置が分からないという判断になり、走行不能になる。
また、Pポジションが読み取れないためエンジンも始動できない。
DTC例:28775 / U0103 “セレクターレバーコミュニケーションなし” など。

【まとめ】
今回はフォルクスワーゲン系セレクターレバーの構造を例にあげて解説した。
シフトバイワイヤー制御の概要を理解した上で、故障原因は通信回路側か、セレクターレバー側かなどを考え
その上で計測や測定値の点検を行い情報を整理していくことが重要である。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次