【はじめに】
この記事は2025年11月9日にブリティッシュモータース様で行われたヘリテージトレーニングデイ第4回「ウェーバーキャブレターの構造、セッティング」に参加したときに学んだことの共有するためのフィードバック投稿である。数回に分けて投稿していく。今回は第5回目の投稿でキャブレターセッティングの基礎知識、前提条件などについて記載する。
【キャブレターセッティングを学ぶ前に】
キャブレターにはアイドルアジャストスクリューや、アイドルミクスチャースクリューなど調整出来る部分はあるが、エンジンが改造されたり異なるキャブレターサイズを搭載したりしていない限りは、基本的にメーカーが指定したジェットで変更は必要ないはず。
ジェットの番手などにばかり着目せず、
・キャブレター各部が正常に作動しているか
・詰まりなどはないか
・各キャブレターの同期はとれているか
・フロートレベルは適切か
・各調整スクリューの調整は適切か
…などの基本的な点検調整が大前提だ。
その上で知識を身に着け、使用環境や顧客の癖、エンジンの改造などに合わせてキャブレターセッティングを変更していくことが大切だ。
【キャブレター調整の前提条件】
①エンジンが暖気されていること
②点火時期が適切であること
【フロートレベルの点検調整】
フロートレベル(油面)の調整は非常に重要な役割を果たす。
低回転時は規定よりも油面が高いとスロージェットのエア穴に燃料が入ってしまい空燃比が濃くなりすぎてしまう。逆に油面が低すぎるとうまく燃料を吸い上げられない。
エンジン回転が高まるとフロート室内の燃料はどんどん吸い上げれら油面が下がる。この時スロージェット先端から油面は離れ、スロージェットからの燃料供給が止まる。そしてそれよりも低い位置に取り付けられているメインジェットから燃料が吸い上げられるように切り替わっていくが、油面調整が悪いとこの燃料供給の切り替えもうまく行われず、両ジェットからの燃料吸い上げ量が狂い空燃比が定まらなくなってしまう。
またフューエルポンプからの燃圧は推奨燃圧0.02MPa~0.03MPa(0.2kg/cm²~0.3kg/cm²)程度である。
燃圧が高すぎたり、フロートバルブに密着不良などがあると燃料が送り込まれ続けてしまい燃料がキャブレターからオーバーフローしてしまう。
最悪の場合、車両火災になる可能性があるため注意が必要だ。

(写真:トップカバーとフロート)
フロートレベルの調整はトップカバーを取り外し、フロートの動きに異常がないか、フロートに損傷がないかを確認し、カバーを垂直にする。
これは、フロート自体の重さでニードルのピンボールを押し下げてしまうのを防ぐためだ。
プライヤーなどを用いて手で曲げて、フロートの最低高さと最高高さが規定の高さになるよう調整する。
また左右のフロートは水平に取り付けられている必要がある。
この時トップカバーを垂直にし、フロートクリップがニードルのピンボールに軽く触れている状態で、ガスケットを装着した状態のカバー上面から両方のフロートまでの距離が基準値通りである必要がある。
基準値に関してはメーカー規定の値に調整する。
下の写真はその基準値の一例である。

またモデルやフロートの材質によって基準値が異なるため注意が必要だ。

【キャブレターの同期(複数のキャブレターを装着している場合)】
多連装キャブレターの場合、各気筒の吸入空気量を揃える「同調(シンクロナイズ)」は、エンジンのスムーズな吹け上がりとアイドリングの安定のために必要不可欠な調整作業である。

写真:サイドドラフト用シンクロメーター

写真:ダウンドラフト用シンクロメーター
①アイドル時の同調
まずは全てのキャブレターの吸入量をシンクロメーターで計測する。
最も吸入量が多い(または少ない)気筒を基準にし、各キャブレターのアイドルストップスクリューを回して、全ての気筒のメーター数値を一致させる。
同調させるとエンジン回転数が上下するため、目標のアイドリング回転数を維持しながら、全気筒が同じ数値になるよう繰り返す。
②スロットルリンケージの調整
次に、全てのバタフライの軸が同時に動くようにスロットルリンケージを調整する。
リンケージとアクセルからのリンクがいちばん近いところがいちばん早く動く。
アイドリングで吸入空気量が揃っていても、すべてのスロットルバタフライが同時に同じように開かないと加速時の吸入空気量を同期できない。
調整はキャブレター間を繋いでいる「シンクロナイザー(バランス)ネジ」を調整する。これによりアクセルワイヤーを引いた時に、全てのバタフライが同時に、かつ同じ角度で開き始めるようにする。
調整作業が終わったら、エンジン回転が2000rpm程度になるようアクセルを少し開けて保持し、その状態でも各気筒の数値が揃っているか確認する。
空気量(同調)を合わせたら、必ずアイドルミクスチャースクリューで燃焼状態を微調整が必要になる(内容は次の投稿に記載)。
これは吸入空気量が変われば、最適な燃料量も変わるためだ。
③注意点
古い車両や使い込まれたリンケージでは、ジョイント部にガタがあると正確な同調が出ないため、調整前にリンケージの動きがスムーズか、戻り不良がないかを確認することも重要である。
またうまく同期できない場合、インシュレーター(マニホールドとの接合部)などから2次エアーを吸っていないか確認する。
同調が取れた状態はアイドリング時の振動が最小限になる。
排気音が「バラバラ」から「連続した澄んだ音」に変わる。
アクセルを軽く開けた際のレスポンスが鋭くファンっ!と吹けがよい。
【ジェット穴のサイズ表記について】
穴の大きさの表記
#40→0.4mmの穴
#140→1.4mmの穴
ジェットは1つづつ買っているとセッティングを出すだけで高額になってしまうので、ハンダで埋めてドリルで穴を開けて番手を決める方法もある
ブラシで軽く磨いて足つけすればハンダが乗るようになる
穴あけはボール盤などを用いて開ける
この細いドリルを使って手でジェット穴の清掃も行うことが出来る
数種類備えておくとよい
参考
この記事は2025年11月9日にブリティッシュモータース様で行われたヘリテージトレーニングデイ第4回「ウェーバーキャブレターの構造、セッティング」の内容を元に記載しました。



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