【キャブレター講座④】チョーク機構について

【はじめに】
この記事は2025年11月9日にブリティッシュモータース様で行われたヘリテージトレーニングデイ第4回「ウェーバーキャブレターの構造、セッティング」に参加したときに学んだことの共有するためのフィードバック投稿である。数回に分けて投稿していく。今回は第4回目の投稿で、チョーク機構について記載する。


【チョーク機構の概要】
チョーク機構は冷間時に混合気を濃くして始動を容易にするために取り付けられている。

単純な機構のものは、上の図のようにスロットルバルブ上流にチョーク用のバタフライバルブを設け、吸気通路を絞り通常時よりも混合気が濃くなるように働く。
あくまでバルブを開閉するのみで、手動でバルブを開閉するものや、バイメタルを利用した電気加熱式のものなどがある。

(上の図は電気加熱式)

SUキャブレターなどはキャブレター本体とは別にチョーク作動用の小さなキャブレターを取り付けているようなものもある。
今回はウェーバーキャブレターの講座のためウェーバーにおけるチョーク機構にフォーカスする


【ウェーバーにおけるスターター(チョーク)の基本構造】
ウェーバーキャブレターの場合、多くのモデルは負圧を利用したチョーク機構を備える。
バタフライバルブにより吸気通路を絞るのではなく、チョーク専用の燃料通路を開閉することで混合気を濃くすることができる。
チョークレバーを引くと、スターター専用のプランジャーが持ち上がる。
この時、プランジャー下部の通路が開放され、スタータージェットで計量された燃料と空気が混合される。


【インテークマニホールド負圧の役割】
エンジンが始動した瞬間、ピストンの下降運動によってインテークマニホールド内に強い負圧(バキューム)が発生する。この負圧がチョーク機構において以下の2つの重要な働きをする。

① 混合気の吸い出し
スターター回路の出口は、スロットルバタフライよりもエンジン側(下流)に配置されている。
エンジン始動後、スロットルがほぼ閉じている状態では、バタフライ下流の負圧が非常に高くなる。
この強力な負圧が、スターター回路から濃い混合気を一気に吸い込み、安定したアイドリングを維持させる。

② 負圧によるプルダウン(オーバーリッチ防止)
一部のウェーバーキャブレター(特にダウンドラフトモデルのオートチョーク付)には、負圧を利用した「バキューム・プルダウン」という機構が備わっている。
始動直後に混合気が濃すぎると、プラグがカブってエンストを起こしてしまう。
これを防ぐために、空気量を強制的に増やすための機構だ。
エンジンが始動し、マニホールド負圧が規定値に達すると、ダイヤフラムが作動する。
このダイヤフラムがリンクを介して、チョークバルブ(または空気導入弁 )をわずかに「強制開放」し、混合気比率を適正化する。


【機構の構成要素部品名と役割】
スタータープランジャー:負圧がかかるバイパス通路の開閉を行う。
スタータージェット:負圧によって吸い出される燃料の量を制限する。
バキュームダイヤフラム:始動直後の高負圧を検知し、物理的にバルブを動かす。


【整備上の注意点】
この機構は負圧に依存しているため、以下のトラブルが発生しやすくなる 。
バキュームリーク
マニホールド周辺やダイヤフラムに亀裂があると、負圧が足りず始動直後のプルダウンが機能しない。
結果として黒煙が出たり、カブりやすくなる。
②プランジャーの固着

長期間使用していない場合、ガソリンの変質によりプランジャーが負圧で吸い出される位置で固着し、オーバーリッチの原因となる。
ウェーバーのバイパス式スターターは、一般的なシングルキャブのチョークに比べて「燃料を直接吸い出す」という性質が強いため、始動直後の負圧制御がエンジンの安定性に直結する。


【旧車乗りの人がエンジンをかける前によく儀式的に行っているあれ…】
かける前にアクセルを何度か踏むのを見かけたことがあるかもしれない。
旧車のオーナーが始動前にアクセルを数回踏み込む行為は、前回のキャブレター講座で投稿した「加速ポンプ」を利用したものだ。

チョーク機構(スターターデバイス)が正常であっても、多くの旧車においてはこの行為が必要、あるいは非常に有効な始動補助となる。その理由は以下の通りである。

  1. 加速ポンプによる「生ガソリン」の供給
    加速ポンプは、前回投稿で紹介した通りアクセルペダルを踏み込むことでポンプ室の燃料を直接シリンダー側へ噴射する仕組みだ。
    チョークは「吸入空気の負圧を利用して燃料を吸い出す」ものだが、静止しているエンジンにはまだ負圧がない。
    始動前にアクセルを踏むことで、マニホールド内にあらかじめ生ガソリンを送り込み、最初の爆発(初爆)を起きやすくすることができる。
  2. チョーク機構との使い分け
    チョーク機構が正常であっても、以下の理由からアクセル操作が併用される。

    ・燃料の鮮度と揮発性
    旧車は現代車に比べ、キャブレター内のガソリンが揮発して減っていることがある。
    加速ポンプで強制的に燃料を送ることで、これを補うことができる。


    ・チョーク特有の「カブリ」回避
    チョークをフルに引き続けると燃料が濃くなりすぎてプラグがカブるリスクがありるが、アクセル2~3回の空踏みであれば、適量の燃料でスマートに始動できる。

    ・オーバーホールの影響
    ウェーバーなどのスポーツキャブレターでは、あえてチョーク機構を殺している(またはワイヤーを繋いでいない)個体も多く、その場合はこのアクセル操作が唯一の始動手段となる。

  3. 注意点
    この行為は「儀式」とも呼ばれますが、やりすぎには注意が必要だ。

    バックファイアのリスク
    燃料を送り込みすぎると、始動時にインテーク側へ火が吹き出す「バックファイア」の原因となり、最悪の場合はエアクリーナー等に引火する恐れがあります。
    また、バックファイアの熱によりキャブレターのインシュレータ(マウント)部が溶けてしまい2次空気吸入の原因になる場合がある。
    (一般の方は間違えがちだが、エキゾースト側に火炎が出ることは「アフターファイア」と呼ぶ。バックファイアとは明確に区別されている。)


    プラグの汚れ
    必要以上に踏むと、エンジンがかかる前にプラグが燃料で濡れてしまい、かえって始動困難になる。

【まとめ】
チョークが正常なら、基本的にはチョークのみで始動できるよう設計されている。まずは基本的機能がしっかり働くよう点検整備が基本だ。しかし、エンジンそれぞれの「癖」や、より素早く確実に目覚めさせるためのテクニックとして、アクセルを2〜3回踏み込む行為は理にかなった合理的な動作と言える。


参考
この記事は2025年11月9日にブリティッシュモータース様で行われたヘリテージトレーニングデイ第4回「ウェーバーキャブレターの構造、セッティング」の内容を元に記載しました。

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