【故障診断事例】Audi TT (8J) エンジンかからない、キーが抜けない (28755 / U0103) 原因と対処手順

【診断対象車両】
メーカー:アウディ (Audi)
車種:TT (8J)
年式:2011年(平成23年)7月
型式:ABA-8JCESF
エンジン型式:CES
走行距離:69000km


【症状概要】
お客様の訴え:エンジンかからない、キーが抜けない
現車確認内容:エンジン始動不能、シフト操作不能のためシフトブーツを取り外しシフトロックを解除した状態にてレッカー入庫。


【診断条件・再現確認】
不具合常時再現中。インストルメントクラスター(ダッシュパネルインサート)上シフトインジケーターP点滅。クランキングしない。キーオフにならずアクセサリーのままキーが抜けない。


【入力故障コード(DTC)】
使用診断機:AUTEL MaxiSys Elite
入力コード:28775 / U0103 セレクターレバーコミュニケーションなし


【点検・測定結果】
故障コードの内容や、再現確認の内容からセレクターレバー(シフトメカニズム)とギヤボックスの通信が成立していないことが考えられる。そのためシフトポジションが読み取れずエンジンはかからない、インストルメントクラスター上はPが点滅しキーが抜けない。
(セレクターレバー位置は従来A/Tのインヒビタースイッチのようなものはミッション側にはなくセレクターレバー内部で検出しCAN通信によってギヤボックスECUへ送信される。詳細なメカニズムは別記事を投稿予定)

セレクターレバーコネクター接続状態でコネクター背面より各信号を点検。

端子割り当て
1:ターミナル31(グラウンド)
2:セレクターレバーPポジションロックスイッチ(F319)
3:(NA)
4:(NA)
5:ターミナル58d(イルミネーション)
6:(NA)
7:ドライブトレーンCAN ハイ
8:ドライブトレーンCAN ロー
9:ターミナル15(IG)
10:ターミナル30(₊B)

セレクターレバー電源とアース端子間電圧バッテリー電圧あり。

セレクターレバーCANハイ、CANロー端子間CAN信号あり。
上記より車両側ワイヤーハーネスまではセレクターレバーとのコミュニケーション(通信)を成立させる要素は良好。
コネクターを取り外して点検すると、コネクター内部に腐食が見られ、セレクターレバー側電源端子が折損していることを確認。

このことからセレクターレバーに電源電圧が与えられず通信出来ていないことが判断できる。


【原因判明・対策内容】
原因:セレクターレバー本体不良(コネクター電源端子腐食ピン折れ)。
交換部品や整備作業内容:セレクターレバーASSYを中古品にて交換。

セレクターレバー本体は車両下側より取り付けられており、フロアを突き抜け車内側より10mmのナット4個にて固定される。
セレクターレバー本体の交換はマフラー、プロペラシャフト、遮熱板を取り外し、室内からシフトレバーノブやセンターコンソールを取り外して固定ナットを緩める。

パーキングロックケーブルがミッション上部に取り付けられているためエンジンルームよりボルトとワイヤー固定プレートを取り外し、ケーブルを取り外す。
交換後の基本調整やコーディングは不要。
パーキングロックケーブルは全てのシフト位置が正しく認識されPレンジの時にパーキングロックが正しく作動する位置にあることを確認する。


【作業後の確認結果】
再現確認、試運転結果:交換後シフト位置の読み取り良好、Pレンジポジションエンジン始動可能。キー抜き取り可能。DTC再入力無。不具合解消。


【注記】
今回使用した汎用診断機 “AUTEL” では故障コードは28775しか表示せず、国際コードのU0103は表示されない。
(正規診断機などでは表示される)
AUTELでも “セレクターレバーコミュニケーションなし” の文言は表示されるため診断は可能。


【まとめ】
今回はアウディTTを例にあげセレクターレバーポジション読取不能の診断修理プロセスを記載した。
シフトバイワイヤーの車両はセレクターレバーポジションを読みとり、CAN通信によってギヤボックスECUやその他ECUへ送信され、変速作動やステアリングロックの作動などが行われることを念頭において不具合確認をすることが重要である。

使用機器
診断機:AUTEL MaxiSys Elite
計測器:トヨタ純正サーキットテスター、FNIRSI DPOS-350P オシロスコープ

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