【構造解説】ブローバイガス還元装置について(輸入車/オイルセパレーター編)

【はじめに】
前回の記事で主に国産車で使用されるPCVバルブを用いたブローバイガス還元装置について記した。
今回はその続編として主に輸入車に使用されるオイルセパレーター一体のブローバイガス還元装置について触れていこうと思う。

ヨーロッパ車などの輸入車では、近年のエンジンにPCVバルブという名称を用いず、内部にメターリングバルブを内蔵したオイルセパレーター(またはバルブユニット)を採用している。
このタイプは外観上PCVバルブが見当たらず、「常時吸気へブローバイガスが導入されている」ように見えるが、実際には内部のメターリング機構で流量が制御されている。
今回はメターリング機構内臓オイルセパレーター系のブローバイガス還元装置の仕組みを解説する。
前回のPCVバルブの記事と合わせて読むことで様々なブローバイガス還元装置について知ることができる。


【構成部品、作動原理】
メターリング機構内臓オイルセパレーターのブローバイガス還元装置

A:クランクケースからのブローバイホース
B:サイクロンセパレーター
C:プレッシャーレギュレーティングバルブ(PCV膜)
D:スプリング
E:インテークへのブリーザーホース

主要構成:クランクケース内のブローバイガスは、オイルセパレーターを通ってガスとオイルが分離され、オイルはオイルパンに、ガスはインテーク系統にそれぞれ送られる。
オイルセパレーターはプライマリとセカンダリの2つがあり、プライマリは大まかにブローバイガスからオイルを分離する。構造は一般的なセパレーターを用いたものでオイルキャッチタンクなどと同様である。
セカンダリはエンジン外側上部に取り付けられており、サイクロンセパレーターと呼ばれるオイルセパレーター(図中B)になっている。

サイクロンセパレーターに導かれたブローバイガスはハウジング内で渦状に10,000rpm以上で高速回転する。このブローバイガスに作用する遠心力を利用してガスとオイルを分離する。

セカンダリセパレーターを通りオイルが分離されたブローバイガスはインテークマニホールドの負圧を利用して還元される。
この経路にはゴム製のPCV膜を用いたプレッシャーコントロールバルブ(図中C)が取り付けられており、過剰な真空吸引を防止する。
このプレッシャーレギュレーティングバルブ上面にはインテークマニホールド負圧が作用している。

このプレッシャーコントロールバルブは国産車に主に用いられるPCVバルブとほぼ同様の作動をし、ゴム膜状のダイヤフラムがインテーク負圧と大気圧によって作動し、インテークマニホールド圧力の変動に応じて開度を変えブローバイガス流量を自動制御しクランクケース内の圧力が一定に保たれるようになっている。

アイドル時など、インテーク負圧が強くなるとダイヤフラムが下方向に引かれ、PCV通路が絞られる(半閉鎖)。
これによりブローバイガス量が制限されると共に、クランクケース内圧が適正範囲(約-20~-40mber程度)に維持される。

またターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給器付きの場合は、ブローバイガスの通路は二つ設けられ、ひとつはインテークマニホールドに、もうひとつは過給器のコンプレッサー側上流へと接続される。プレッシャーコントロールバルブと、チェックバルブの働きにより、インテークマニホールドが負圧の時はインテークマニホールド側の通路へ、そしてインテークマニホールドが正圧(過給圧)のときは過給器のコンプレッサー上流側の通路に切り替えることにより、エンジン負荷(インテークマニホールド圧力)がどのような状態でも、常にブローバイガスは吸気側へ送られる仕組みになっている。

(写真/ブリーザーパイプ上に取り付けられたチェックバルブ)


また少し余談にはなるが、輸入車は日本車と違い極寒冷地での使用も考慮し、ブローバイガス中の水分の凍結によりブローバイガス通路が塞がってしまうことを予防するため様々な工夫が成されている。

例えば上の写真はポルシェパナメーラのブローバイガスパイプの写真だが、電気配線が接続されている。これはPTCセラミックヒーターが取り付けられており、通電すると熱を発生し凍結を防止するような仕組みになっている。

またほかの車種などではPTCヒーターは備えていないが、ブリーザーパイプにエンジン冷却水路を隣接させ凍結を防止するものや、機械式切替バルブによりシリンダーヘッドカバー内にあえて空気を導入し、換気しながら常に空気を入れ替えることで凍結を防止する仕組みを取っていたりするものもある。

このように様々な仕組みを設けて極寒冷地でも凍結による不具合が発生しないように考えられている点も日本車と異なる点である。


【点検方法】
メーカー修理所などの資料では特に定められた点検方法はない。
また、プレッシャーレギュレーティングバルブのPCV膜が収まっている部分は非分解になっており点検不可(分解したら元に戻れない場合が多い)。
基本は外観上パイプ類やホース類の損傷を確認するとともに、プレッシャーレギュレーティングバルブが収まっている部分にヒューヒュー音が発生していないか確認する。
診断機にてA/Fの状態をチェックする。
またチェックバルブが電気式のものなどに対してはDTCや診断機によるアクティブテストなどを利用して点検する。
必要に応じて自作配管等で加圧や吸引などでプレッシャーレギュレーティングバルブの状態を確認する。

また簡易的な方法としてアイドリング中オイルフィラーキャップを開ける点検方法がある。
PCVが正常に機能している場合は軽く吸われる程度の負圧がある。
オイルフィラーキャップが強く吸い付く、または大きく吹き返して来る場合はPCV系統の不良がある可能性がある。
しかしこの点検方法は感覚によるものなので、あからさまな結果でない限り正確な判断材料にはできない。
普段から正常な車両で、どの程度の負圧が発生しているか知っておく必要がある上、エンジンによりその感覚は異なるので、あくまで予測を立てていくための一例と思っていただければと思う。


【故障診断】
プレッシャーレギュレーティングバルブのゴム(PCV膜)に破れが生じた場合、ヒューヒュー音が発生すると共にアイドリング不安定や、A/F補正値がリーン側に増加したりする。
オイルスラッジなどによりプレッシャーレギュレーティングバルブに開固着が生じた場合も同様であるが、全開固着した場合はアイドリング時ハンチングが生じたり、クランクケースの負圧が高まり過ぎてしまいオイルシールからのオイル漏れが発生したりする。
逆に閉固着した場合はブローバイガスが排出できずクランクケース内圧の上昇によりオイルシールからのオイル漏れ、ホース抜けなどが発生する可能性がある。


【オイル消費に関する考え方】
国産車の整備メインの方は想像がつかないかもしれないが、ヨーロッパ車などの輸入車はインテーク系統のパイプやインタークーラーを脱着するとき、外した部分から流れ出てくるほどエンジンオイルが出てくるのは日常茶飯事。国産車なら異常があるのでは?と思うレベルだ。
なぜこのような違いがあるのか?
それは、「車の使われ方」「使用環境」「オイル消費への考え方」に理由がある。多くのヨーロッパ車の取扱説明書には10,000kmで1Lのエンジンオイルを消費することは正常で故障ではないとはっきり記載されている。
逆に日本ではオイルを消費することは基本的に故障という認識があるため、できる限りオイル消費を抑えるように考えられている。
そのためインテーク通路内もオイルが流れ出るほどのことはあまりない。
日本の道路事情を想定しショートトリップ(短距離走)を前提にしている国産車に対して、輸入車の多くはある程度の距離を高負荷で走る前提でピストンクリアランスなどを定めている点も、使用環境の違いからと言えるだろう。
サイクロンセパレーターなどでブローバイガスから意欲的にエンジンオイルを分離しようとしているが、あくまで連続的な高負荷走行を想定しているため、低負荷のショートトリップを繰り返すと前述の通りの通りインテーク通路にエンジンオイルが溜まってしまう。


【まとめ】
今回は主にヨーロッパ車に使われる、PCVバルブを単体で備えていないブローバイガス還元装置を例にあげて解説した。これはあくまで一例で、メルセデス・ベンツやBMWなど様々なヨーロッパ車において、同様のものもあれば国産車と同様にPCVバルブを単体で備えているものもある。
今点検する車両がどのようなブローバイガス還元装置を備えているか把握し、作動状態を理解した上で診断をする必要がある。


参考文献
各自動車メーカーが発行する整備要領書

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次