【構造解説】ブローバイガス還元装置について (国産車/PCVバルブ編)

【はじめに】
今更説明するまでもなく、ブローバイガス還元装置は圧縮工程時クランクケースに吹き抜けたガスを吸気側に送り、大気に解放することなく処理するシステムである。それ自体はご存知の事だろう。
しかしあえてこのシステムを今回記事にしたのは、時にこのシステムの通路から不具合が発生するケースがあるためである。それはブローバイガス還元装置そのものの故障の時もあれば、別の不具合の影響をブローバイガス還元装置経由で受けるケースもある。
そのため、ブローバイガス還元装置の仕組みについて今一度見直したい。
一様では無いが、国産車と輸入車で主となるブローバイガス還元装置の仕組みが異なる。
今回は国産車で代表的な、PCVバルブを用いたブローバイガス還元装置の構造について紹介する。


【構成部品、作動原理】

A:スロットルバルブ
B:サージタンク
C:インテークマニホールド
D:PCVバルブ
E:シリンダーヘッドカバー
F:エキゾーストマニホールド

主要構成:クランクケース内のブローバイガスは、シリンダーヘッドカバーに接続された2本のホースを通って吸気通路へ送られる。
ひとつのホースはPCVバルブを介してインテークマニホールドなどスロットルバルブ下流へ接続され、もうひとつのホースはバルブを介さずにスロットルバルブ上流の吸気管へ接続される。
ブローバイガスや空気がどこを通るかはエンジン負荷(インテークマニホールド負圧やクランクケース内の圧力)により左右される。

PCVバルブはただの逆止弁ではない。
インターネット上での多くの解説では”PCVバルブはインテークマニホールド負圧を利用してブローバイガスを吸気菅に送り、逆にシリンダーヘッドカバーへ空気が逆流してこないように働く”と記載されている。これは間違いではないが、不正確あるいは説明が不足している。

この説明ではアイドリング時の負圧が高いときにバルブが開き、そして逆止弁として働くと解釈してしまいそうになるがそうではない。
それではPCVバルブはどのように機能するか改めてもう一度復習し理解を深めていこう。


一般にエンジンから発生するブローバイガス量はエンジンの負荷が高いとき(吸気管負圧が低いとき)は多量に排出され、エンジン負荷が少ないとき(吸気管負圧が高いとき)は排出は少量になる。このためエンジン負荷に応じてブローバイガス流量を調整するベンチレーションバルブ(PCVバルブ)を設けている。


①アイドル回転時
ブローバイガスの発生は少量である。と同時にPCVバルブは高いマニホールド負圧のため強くインテークマニホールド側に吸引され、バルブのエア通過面積が小さくなっている。
そのためインテークマニホールドに導入されるブローバイガスは少量となる。

②一般走行時(部分負荷走行時)
通常のマニホールド負圧はまだ高いのでアイドル回転時と同様な作用が行われ、負荷が増加しブローバイガスが増加してくるとベンチレーションバルブの特性により通過面積が大きくなり吸入量も増加する。

③加速時および高負荷時(全負荷走行時)
ブローバイガスは増加しバルブ特性から吸入量も増える。バルブを通過して吸入される量が十分にあるが、もしブローバイガスがそれ以上になった場合はエアクリーナーへ入る回路から吸入系へ導入される。

④過給およびバックファイア時
ターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給器付き車両において、過給を行っているときは吸気菅が正圧になるためPCVバルブは逆止弁として働き、シリンダーヘッドカバーへの逆流を防ぐ。
また、自然吸気エンジン車両においてもバックファイアなどにより吸気菅が正圧になってしまった場合は同様にPCVバルブは逆止弁として機能する。

文書では難しいので、わかりやすいように下の図を見て欲しい。

このようにインテークマニホールド負圧によりPCVバルブの開度が変化し、エンジンの状態に合わせてブローバイガスの量が変化することに対応している。アイドリング時(インテークマニホールド負圧が大きい時)は流量を少なくすることでインテークマニホールドに2次エアとして空気が流れ混まないような仕組みになっている。

また、部分負荷時にPCVバルブ側からブローバイガスが吸われていく際はスロットルバルブ上流のホース側からシリンダーヘッドカバー側へと空気が流れ、クランクケース内が負圧にならず、その空気の流れを使いシリンダーヘッドカバー内を換気するように新気がブローバイガスを押し出す。
そして全負荷時にブローバイガスの量が増え、PCVバルブ側の通路では足りずクランクケース内圧が上がってくると、シリンダーヘッドカバーからスロットルバルブ上流に繋がるホースにもブローバイガスが流れる。
つまり、シリンダーヘッドカバーとスロットルバルブ上流を繋ぐホース内の空気の流れる向きはエンジンの状態により入れ替わる。


【故障診断】
なぜあえてここでブローバイガス還元装置という基本的な装置を復習しているかというと、冒頭に記した通り故障診断に必要だからである。
PCVバルブの内部が破損し常に開いた状態になってしまえば、スロットルバルブが閉まっており吸気管負圧の大きい時に常に2次エアを吸ってしまう状態になる。(スロットルバルブ手前のホース→シリンダーヘッドカバー→開固着したPCVバルブ→インテークマニホールド)
またPCVバルブや、もう一方のホースにオイルスラッジなどによる詰まりが生じるとブローバイガスによりクランクケース内の圧力が高まり、クランクやカムなどの回転軸に取り付けられたオイルシールよりオイル漏れが発生したりする。これは寒冷地の場合ブローバイガス中に含まれる水分が凍結して発生する場合もある。
ブローバイガス還元装置に故障がなかったとしても、例えば、高圧燃料ポンプからシリンダーヘッドカバー内へガソリンがリークした場合、気発した燃料はブローバイガス還元装置を通って吸気系統に流れ込み、A/Fがリッチになる。
この時どんなエンジンの運転状態のときにPCVバルブを経由して沢山のブローバイガスが吸入されるかを理解していれば故障診断の役に立つ。


【点検方法】
具体的なPCVの点検方法もネット上に散見される方法と、メーカーが定めた方法は少し異なる場合がある。
ネット上には、「空気を送ったり吸い込んだりしてシリンダーヘッドカバー側からインテークマニホールドに向かって通気あり、逆はなし、が正常」とよく書かれているが、それでは逆止弁としての機能しか点検できない。
もちろん逆止弁としても機能する必要がある(特に過給器付きの場合)が、根本の作動を考えると内部のバネがインテークマニホールド負圧とのつり合いで、開度を調整できるバネレートでないと正しく作動しない。
例としてトヨタの定める点検手順は
「エンジンがアイドリング作動中にインテークマニホールドとPCVバルブ間のホースをつまんだり離したりして、PCVバルブがカチカチと作動音がするか確認する」と記載されている。
つまりアイドリング時のインテークマニホールド負圧を使ってPCVバルブが作動するか確認するということになる。
息を吹き込む、吸うといった点検方法では作用させる負圧がインテークマニホールド負圧と同等か確認できない。
また息やマイティバックなどを使うと継続的に負圧にできず瞬間的に通気があるかどうかしか判断できない。
インテークマニホールド負圧を利用したホースを摘む点検方法と、逆止弁としての機能を点検する方法は自分の中で切り分けて考えないといけない。


【まとめ】
PCVバルブをただのワンウェイバルブと思っている方が多いので詳しく解説した。
ブローバイガスはいつ多くなるのか、そしてPCVバルブはいつ開きが大きく、いつ開きが小さいのか、そしていつ閉じるのか。
これをしっかりと理解しておけば、故障診断の際思いつく点検部位の引き出しが増えていく。


参考文献
一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会 発行
『二級ガソリン自動車 エンジン編 整備士養成テキスト』
『三級自動車ガソリン・エンジン 整備士養成テキスト』

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次