【ガソリンエンジンの圧縮測定】基準値と正しい圧縮測定の方法、その結果による判断方法

【概要】
この基準値が必要になる点検・診断場面:エンジン始動不能、エンジン不調、失火、ラフアイドルなど


【整備基準値の例】

TOYOTA 5A-FE 初期型(乗用車向け)
圧縮比
9.8 : 1
標準圧縮圧力
1,324 kPa(13.5 kgf/cm² )
最低許容圧力
981 kPa(10.0 kgf/cm² )
気筒間最大許容差
98 kPa(1.0 kgf/cm² )以内

HONDA C32B (スポーツカー向け)
圧縮比
10.5 : 1
標準圧縮圧力
1,324 kPa(13.5 kgf/cm² )
最低許容圧力
981 kPa(10.0 kgf/cm² )
気筒間最大許容差
196 kPa(2.0 kgf/cm² )以内


【一般的な測定基準】
①ガソリンエンジンの圧縮圧力
規定値:エンジンにより異なるため一様ではないが一般的に1000kPa〜1500kPa(約10〜15kg/cm²)程度。
イメージは約11kg/cm²程度。
7kg/cm²以下の場合は特に注意が必要で下記の測定条件を満たしているか再確認する。
基準圧力は最終的に修理書を参照する必要があるが、診断の場面では気筒差や上がり方などに注目することが重要だ。
②圧縮圧力の気筒差
最低測定値が最高測定値の75%以上あること。基本的に1kg/cm²以下。


【測定条件】
測定条件は基本的な所だが意外と忘れがちなので記載しておく。
・電源電圧(バッテリー)とスターターが正常であること
(クランキングスピードが遅いと圧縮圧力の測定値は低くなる)
・スロットルバルブが全開でシリンダー内へのエアの流れが制限されていないこと
(キャブレター車などはチョークプレートも全開にすること)
・エンジンが暖気されていること
(冷間時にはピストンクリアランスが大きく正確な最高圧力は測定できない)
ただしエンジン始動不能や、単気筒失火を診断するためなら冷間時でも判別は可能。


【測定方法】
スパークプラグを全数取り外し、測定する気筒にコンプレッションゲージをセットする
インジェクターのコネクターを抜くなどして燃料噴射を停止する
スロットルバルブを全開にする
(電子スロットルの場合はIG ONでスロットルペダルが開かない車種もあるため注意。開かない場合はコネクターを切り離し物理的にスロットルバルブ開いておくか、本体を取り外す。)
少なくとも4回転以上はクランキングし、圧縮圧力が1番上がりきった所を読み取る
(気筒差にフォーカスして点検したい場合は測定時クランキングする回数を合わせると比べやすい)


【異常時の判断基準】
①基準値が分からない場合の参考値
・最低測定値が700kpa(約7kg/cm²)を下回っている
・最低測定値が最高測定値の75%を下回っている
②基準値がわかる場合
圧縮圧力と気筒差が基準値内であること。基準値以上で全体的に均等に低くなって来ている場合は走行距離による正常な摩耗と判断する。
測定値がメーカー仕様よりも高くなっている場合はピストンまたは燃焼室のカーボン蓄積が考えられる。


【診断】
・正常な圧力は各シリンダーのテスト開始から終了まで、均等に素早く増加する。
・圧力が最初のストロークの時に低く、その後のストロークで増加するが正常な圧力に達しない場合、ピストンリングの不良が考えられる。


・圧力が最初のストロークの時に低く、その後のストロークでも増加しない場合、バルブ漏れが考えられる。
・圧縮不良かあるシリンダーのプラグホールよりエンジンオイルを少量(プランジャ式オイラーで3回程度)注入し、低圧で再度テストを実施。圧力が改善する場合リング不良が考えられ、改善しない場合はバルブ不良が考えられる。


・二つの隣接するシリンダーの測定値が低い場合は、シリンダー間のヘッドガスケットからの漏れが考えられる。


【注記】
トヨタ プリウスなどのアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)のエンジンを用いた車両の圧縮圧力測定は注意が必要である。
一般のガソリンエンジンに比べて、圧縮比は高いがバルブ遅閉じ(または早閉じ)により吸入する空気が少ないため圧縮圧力自体は正常で低い。

参考基準値
TOYOTA 2ZR-FXE (アトキンソンサイクル)
圧縮比
13.0 : 1
標準圧縮圧力
981 kPa(10.0 kgf/cm² )
最低許容圧力
784 kPa(8.0 kgf/cm² )
気筒間差(最大許容差)
98 kPa(1.0 kgf/cm² )以内


【まとめ】
今回は基本に戻りエンジンの3要素「良い圧縮、良い火花、良い混合気」のうち圧縮圧力の点検や診断方法についてまとめた。
ただ気筒差をサラッと見る時が多いが、しっかり診断したい場合や、診断の結果がエンジンのオーバーホールに繋がる場合などは、正しい点検方法で正確にデータをまとめる必要がある。
現場で久しぶりに本を引っ張り出して読むより、このサイトでサラッと復習して正しい点検・診断を進めて貰えればと思う。

参考文献
一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会 発行

『二級ガソリン自動車 エンジン編 整備士養成テキスト』
『三級自動車ガソリン・エンジン 整備士養成テキスト』
各自動車メーカーが発行する整備要領書

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